矯正治療で歯並びを整える時、歯が並ぶスペースが足りない場合は抜歯をする必要があります。
しかし、近年は抜歯をしないことを売りにしている矯正治療も増えています。
健康な歯は残した方がいいのは当然ですが、矯正治療で抜歯をしないことは本当にいいことなのでしょうか?
抜歯をしない矯正について、解説します。
矯正治療に抜歯が必要なのはなぜ?
歯並びが悪い原因は様々ですが、中にはスペースが足りないということもあります。
歯が並ぶスペースが足りないのは、歯が大きい、顎が小さい、あるいは両方が原因ということもあります。
歯が大きい場合は、小さくすることはできません。
また、子どものうちは顎を広げる矯正治療もできるのですが、大人になってから顎を広げることはできません。
では、スペースが足りない場合はどうしたらいいのでしょうか?
スペースが足りないのであれば、スペースに入るものを少なくすればいいのです。
数を減らしてきちんと並べるために、抜歯が必要となるのです。
しかし、本来抜歯をするのは虫歯が歯の根元まで広がってしまった場合や、歯がきちんと機能しなくなった場合、割れてしまった場合などです。
健康な歯を抜歯するのは、抵抗がある人もいるでしょう。
では、歯を残したい場合は、どうしたらいいのでしょうか?
抜歯をせず歯をきちんと並べる方法は、3つあります。
具体的には、何をするのでしょうか?
まず、歯を抜くのではなく、奥歯を奥に移動させることでスペースを確保するという方法があります。
奥歯を動かすのは難しいとされていたのですが、歯科用アンカースクリューを使用することで動かすことができるようになったのです。
歯列を広げることで、スペースを確保するという方法もあります。
歯列はアーチ形に並んでいるので、広げることで歯が入るスペースを確保できるのです。
ごくわずかに広げれば十分なスペースができるので、顔の輪郭もほとんど変わりません。
最後の方法が、歯を少しだけ削るという方法です。
何本かの歯の表面を0.52mmなど削るだけで、十分なスペースを確保できます。
不足しているスペースはほとんどの場合わずかなので、2~3本も削れば充分なことが多いでしょう。
歯を残すのはいいこと?
健康な歯を抜かずに歯列矯正をするのは、良いことなのでしょうか?
歯を抜かずに矯正治療をすると、歯を多く残すことができるというメリットがあります。
永久歯は抜いてしまうともう生えてこないので、抜かない方がいいというのは確かでしょう。
虫歯になった時も、抜かない治療をすることが増えています。
歯を削った場合ももう戻らないため、なるべく削りたくないというのも確かですが、虫歯と矯正治療では歯を削らないことに大きな違いがあるのです。
歯を抜かずに歯列矯正をすると、デメリットもあります。
狭いスペースに歯を並べようとすると歯茎にも大きな負担がかかるため、歯茎が退縮してしまうことがあります。
歯茎が下がってしまうと、根面う蝕になる可能性も高くなるのです。
また、抜歯をしないと口もとやEラインの改善が難しいでしょう。
Eラインは、鼻と顎の先端を結んだラインに唇がかかるかどうかを示したもので、触れなければ綺麗な横顔となるのですが、抜歯をしないと改善できないことが多いのです。
矯正治療の前の検査で、抜歯が必要無いと診断されることもあります。
必要ないと診断された時は、抜歯をしなくても悪化することはないのですが、口元が出っ張っている場合は改善されにくいでしょう。
矯正治療では、歯列を整えることが最も重要な目的です。
歯を残すかどうかは決めつけるのではなく、必要に応じて対応した方が確実に矯正できるでしょう。
歯を残しても問題はないか、きちんと歯科医と話し合ってから治療を始めましょう。
まとめ
歯列矯正で歯並びを整える時、スペースが足りなければ抜歯をすることもあります。
しかし、近年では歯を抜かずに矯正治療を行うことも増えています。
しかし、歯を抜かなければならないのに無理をして歯を残すと、歯肉が下がって根面う蝕のリスクが上がるなどのデメリットもあります。
歯を抜くかどうかは、検査を受けた上で歯科医に診断してもらい、決定しましょう。